親が亡くなった後、あるいは施設に入った後、
実家という建物が急に「これからどうするか」を
決めなければならない対象になります。
売るべきなのか、貸すべきなのか、それとも
今はまだ決めなくてよいのか。
答えを急ぐ必要はありませんが、判断のための
材料を整理しておくと、気持ちが少し楽になります。
この記事では「売却」と「賃貸」、それぞれが
向いている状況の目安と、見落としやすい
費用や手間の違いをまとめます。
どちらか一方を勧める記事ではありません。
読み終えたときに、ご自身の状況と照らし合わせて
少し方向性が見えてくることを目指しています。
売却と賃貸、どちらを検討すべきかの目安
売却が向く場合:戻って住む予定がない/管理の手間をかけられる人がいない/
まとまった資金が必要/相続人が複数いて公平に分けたい/建物の老朽化が進んでいる。
賃貸や保留を検討したい場合:将来自分や子どもが住む可能性がある/
思い出のある家をすぐには手放せない/立地的に借り手が見込める/
当面の生活資金に余裕がある。
売却を検討する人が考えていること
実家を売却する最大の理由は「区切りをつけられる」ことです。
相続人が複数いる場合、不動産のままだと分割が難しく、
売却して現金化することで公平に分けやすくなります。
遠方に住んでいて管理に通う余裕がない、建物が古く
維持費や修繕費がかさむ見込みがある、という場合にも
売却は現実的な選択肢になります。
一方で、売却には相続登記や測量、家財の片付けなど
事前に済ませておく手続きがいくつもあります。
流れの全体像は実家を売却するまでの流れと必要な手続きで
確認しておくと、見通しが立てやすくなります。
また、相続登記が済んでいない場合は売却できないため、
相続登記はいつまでに?義務化後の手続きも
あわせて確認しておくことをおすすめします。
賃貸を検討する人が考えていること
「まだ手放す決心がつかない」「将来子どもが住むかもしれない」
という場合、賃貸に出して収益を得ながら
所有権を維持するという選択もあります。
立地が良く借り手が見込める地域であれば、
家賃収入が管理費や固定資産税の負担を
補ってくれる可能性もあります。
ただし、賃貸経営には空室リスクや修繕費、
入居者対応などの手間が伴います。
遠方に住んでいる場合は、管理会社に委託する
費用も見込んでおく必要があります。
すぐに結論を出さず、まずは保留して様子を見る
という選択肢もあります。詳しくは
実家を売らずに活用する選択肢|賃貸・管理・保留で
整理しています。
何もしない「保留」という選択
売却か賃貸か、どちらかを急いで決める必要は
必ずしもありません。
気持ちの整理がつかないうちは、最低限の管理だけ
しながら時間をかけて考えるという方法もあります。
ただし、空き家のまま放置すると、建物の傷みが進んだり、
固定資産税の負担が続いたりする点は
把握しておく必要があります。
放置によるリスクについては
空き家になった実家を放置するとどうなるかで
詳しく取り上げています。
保留する場合でも、最低限の管理は必要です。
通気や通水、庭の手入れなどをどの程度の頻度で
行うべきかは空き家になった実家で最低限やっておく管理を
参考にしてください。
遠方に住んでいて頻繁に通えない場合は
遠方の実家をどう管理する|鍵と見回りの現実的な方法も
判断材料になります。
家財が残ったままでも検討はできる
「家財が残っているから売却も賃貸もまだ考えられない」
と感じる方も多いのですが、必ずしも先に
すべて片付けなければならないわけではありません。
家財を残したままの売却が可能かどうかは
物件や買主の条件によって異なりますが、
家財を残したまま実家を売却できるのかで
考え方を整理しています。
判断を先延ばしにするための情報収集として、
先に読んでおいても構いません。
| 項目 | 売却 | 賃貸 | 保留(当面何もしない) |
|---|---|---|---|
| 初期費用の目安 | 測量・登記費用などがかかる場合がある | 修繕・原状回復費用がかかる場合がある | 最低限の管理費のみ |
| 継続的な負担 | 売却後は基本的に発生しない | 管理委託費・空室時の固定資産税など | 固定資産税・維持管理の手間 |
| 得られるもの | まとまった現金・区切り | 継続的な家賃収入の可能性 | 考える時間 |
| 向いている人 | 戻る予定がなく管理の手間を避けたい人 | 所有権を残したい・立地に自信がある人 | 気持ちの整理がまだつかない人 |
- 相続登記が済んでいないと売却も賃貸契約も進められない場合があります。
早めに状況を確認しておくと安心です。 - 売却額や賃料は立地や建物の状態によって幅があり、
事前の見積もりや査定と実際の結果が異なることもあります。 - 兄弟姉妹など相続人が複数いる場合は、
方針を決める前に話し合いの機会を持つことをおすすめします。 - 解体して更地にしてから売却する場合、
固定資産税の扱いが変わることがあります。
事前に確認しておきましょう。
判断する前に整理しておきたいこと
売却か賃貸かを決める前に、次の点を確認しておくと
判断がしやすくなります。
まず、相続人が自分一人か複数かどうか。
複数の場合は分割方法についての合意が必要です。
分け方の選択肢は実家を兄弟で相続する場合の分け方の選択肢で
確認できます。
次に、建物を解体して更地にする可能性があるかどうか。
解体費用や税金の変化については
実家を解体して更地にすると税金はどうなるかを
参考にしてください。
空き家のまま所有し続ける場合の火災保険についても、
空き家の火災保険はどうなるのかで
確認しておくと安心です。
Q. 売却と賃貸、どちらが得か決められません。
金額の損得だけで比較するのは難しく、立地や建物の状態、
ご自身がどの程度手間をかけられるかによって変わります。
複数の不動産会社に査定や賃貸相談をしてみて、
具体的な数字を比べてから考える方も多いです。
Q. まだ決められないので、
しばらく空き家のままにしておいても大丈夫でしょうか。
短期間であれば問題ありませんが、放置期間が長くなると
建物の傷みや近隣トラブルにつながることがあります。
最低限の管理を続けながら、時間をかけて
考えることは十分可能です。
Q. 家財が残っていますが、
その状態でも査定や賃貸相談はできますか。
家財が残っていても査定や相談自体は可能な場合が多いです。
ただし、実際の売却や賃貸契約の前には
片付けが必要になることがほとんどです。
Q. 相続登記がまだ済んでいませんが、
先に検討だけ進めてよいですか。
検討や相談自体は登記前でも進められますが、
実際の売却手続きには相続登記が必要になります。
並行して手続きを進めておくとスムーズです。
まとめ ―
実家を売るか貸すかは、金額の損得だけでなく、
管理の手間をかけられるか、思い出とどう向き合うか、
相続人との関係をどう整えるかによっても
答えが変わってきます。
すぐに結論を出さず、必要な手続きや管理の現実を
把握したうえで、ご自身のペースで決めていただければと思います。
― 実家じまい手帖 編集部
