空き家になった実家を放置するとどうなるか

親が施設に入った、あるいは亡くなったあと、
実家に誰も住まなくなってしまった。
そのまま鍵をかけて、時々様子を見に行くだけ。
そういう状態が数か月、あるいは数年続いている方も多いのではないでしょうか。

「そのうち片付けよう」「気持ちの整理がついたら考えよう」と思っているうちに、
実家という存在は少しずつ変化していきます。
ここでは、空き家になった実家をそのままにしておいた場合に、
実際にどのようなことが起こり得るのかを、順を追って整理します。
すぐに何かを決める必要はありません。
まずは「知っておく」ことから始めていただければと思います。

この記事が参考になる場合

この方法が向く場合:実家を今すぐ売る・貸す予定はないが、
放置した場合に何が起きるのかを知った上で、今後の方針を考えたい方。
行政からの通知が来た、または来るかもしれないと不安を感じている方。

別の方法を検討したい場合:すでに売却や賃貸活用の方針が固まっている方は、
具体的な手続きを扱った記事のほうが参考になります。

空き家を放置すると起きる主なこと

誰も住まなくなった家は、人が暮らしている家に比べて劣化の進み方が速いといわれます。
換気がされない、水道を使わないことで排水管が乾いて臭いが上がる、
雨戸を閉め切ったままで湿気がこもる、といったことが積み重なるためです。

放置によって起こり得ることを大きく分けると、
次のようになります。

  • 建物の老朽化が進み、屋根や外壁の一部が落下する、
    倒壊の危険が出てくる
  • 庭木や雑草が伸び、近隣との境界を越える、
    害虫や害獣が発生する
  • 不審者の侵入や、放火などの防犯上のリスクが高まる
  • 行政から「特定空家等」に指定され、
    固定資産税の優遇が外れる
  • 資産としての価値が下がり、将来売却しづらくなる
  • 相続人が複数いる場合、
    時間が経つほど話し合いがまとまりにくくなる

これらは同時に起こるわけではなく、放置の期間や建物の状態によって進み方が異なります。
次の項目で、特に多くの方が気にされる「特定空家」と「固定資産税」について、
もう少し詳しく見ていきます。

特定空家に指定されるとどうなるか

「空家等対策の推進に関する特別措置法」という法律により、
倒壊のおそれがある、衛生上有害である、景観を著しく損なっているなど、
一定の基準に当てはまる空き家は、市区町村から「特定空家等」に指定されることがあります。

指定を受けると、まず行政から助言・指導が行われます。
改善が見られない場合は勧告、さらに命令へと進み、
それでも対応がなければ、行政が代わりに解体などを行う「行政代執行」に至ることもあります。
代執行にかかった費用は、後から所有者に請求されます。

また、勧告を受けた段階で、後述する固定資産税の住宅用地特例が外れる点も、
知っておいていただきたいポイントです。

ここまでの措置に至るケースは多くはありませんが、
「連絡が来る前に何をしておけば良かったか」を知っておくことには意味があります。
遠方にお住まいで実家に頻繁に行けない方は、遠方の実家をどう管理するかも合わせてご覧ください。

固定資産税が上がる仕組み

住宅が建っている土地は、「住宅用地の特例」により固定資産税が軽減されています。
おおまかに言うと、200平方メートルまでの部分は課税標準額が6分の1に、
それを超える部分は3分の1に抑えられる仕組みです。

ところが、特定空家等に指定されて勧告を受けると、この特例の対象から外れます。
結果として、土地の固定資産税額が数倍になる可能性があります。
建物を解体して更地にした場合も、この特例が外れる点は同様です。
そのため「更地にすれば税金が下がる」とは限らず、
むしろ建物があるままのほうが税負担が軽いケースもあります。
解体を検討される際は、解体費用の目安とあわせて、税負担の変化も含めて考えることをおすすめします。

放置期間の目安とリスクの変化

すべての空き家が同じ速度で劣化するわけではありませんが、
目安として、時間の経過とともにどのようなことが起こりやすいかを整理しました。
あくまで一般的な傾向であり、建物の構造や立地によって差があります。

放置期間の目安 起こりやすいこと 対応の余地
〜半年 庭木の繁茂、郵便物の滞留、近隣からの問い合わせ 比較的容易。定期的な見回りで対応可能
半年〜2年 水回りの劣化、害虫・害獣の発生、防犯面の不安増加 早めの清掃・管理委託で改善しやすい
2〜5年 屋根・外壁の劣化進行、行政からの通知の可能性 売却・活用の検討が現実的な選択肢になる
5年以上 特定空家指定、税負担の増加、資産価値の大幅な低下 解体・売却を含めた抜本的な判断が必要になりやすい

放置しないための現実的な選択肢

「今すぐ売る」か「そのまま放置する」かの二択ではありません。
実際には、次のような中間的な選択肢もあります。

  • 定期的に管理会社や親族に見回りを依頼し、当面は保留にする
  • 賃貸や駐車場として活用し、収益を得ながら維持する
  • 老朽化が進む前に売却し、資産として現金化する
  • 解体して更地にし、土地としての活用や売却を検討する

どの選択肢を取るにしても、まず登記や相続の状況を確認しておく必要があります。
相続登記は2024年から義務化されており、
相続登記の期限と手続きについて早めに把握しておくと、
後々の選択肢が狭まりにくくなります。
また、売らずに活用する道を探りたい場合は、賃貸・管理・保留といった活用の選択肢も参考になります。

家財がそのまま残っている場合は、片付けの手順を先に確認しておくと、
その後の判断がしやすくなります。実家の片付けをどこから始めるかも合わせてご覧ください。

  • 特定空家に指定されるまでには段階があり、
    多くの場合は事前の通知や助言があります。
    突然命令が来るわけではありません。
  • 固定資産税の特例が外れるかどうかは自治体の判断によります。
    目安として知っておき、
    実際の税額は自治体に確認してください。
  • 相続人が複数いる場合、放置期間が長引くほど話し合いが複雑になりやすい傾向があります。
    早い段階での情報共有が助けになります。
  • 解体や売却を急いで決める必要はありません。
    まずは現状の建物の状態と、
    家族の意向を確認することから始めてください。

よくある質問

Q. 空き家にしてから何年で特定空家に指定されますか。

明確な年数の基準はありません。
建物の劣化の程度や近隣への影響によって判断されるため、
築年数が浅くても管理が悪ければ対象になり得ますし、
古くても状態が保たれていれば対象にならないこともあります。

Q. 遠方に住んでいて頻繁に見に行けません。
どうすればよいですか。

空き家管理を代行するサービスや、
シルバー人材センターなどに定期巡回を依頼する方法があります。
まずは月に一度程度の見回り体制を作ることから検討されると良いでしょう。

Q. 売るかどうか決められません。
とりあえず放置しても大丈夫ですか。

すぐに大きな問題が起きるとは限りませんが、時間が経つほど建物の劣化や税負担、
相続人間の調整といった課題が積み重なりやすくなります。
今すぐ結論を出す必要はありませんが、
定期的な管理と情報の整理だけは続けておくことをおすすめします。

Q. 兄弟姉妹で意見が分かれています。
どう進めればよいですか。

実家の扱いは感情も絡むため、
意見が割れるのは自然なことです。
焦って結論を出そうとせず、まずは現状の情報を共有するところから始めると、
話し合いが進めやすくなります。

まとめ ― 放置のリスクを知った上で、今できることを

空き家になった実家を放置すると、建物の劣化、防犯上の不安、
特定空家指定による税負担の増加、資産価値の低下など、
時間の経過とともにいくつものリスクが積み重なっていく可能性があります。
ただし、これらは一気に起こるものではなく、段階を踏んで進んでいくものです。

今すぐ売却や解体を決める必要はありません。
まずは実家の現状を確認し、定期的な管理の方法を考えるところから始めてみてください。
それが、将来の選択肢を残しておくための、無理のない一歩になります。

― 実家じまい手帖 編集部

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