実家の登記簿を取り寄せてみたら、名義人の住所が何十年も前のままだった。
そんな氏名や住所を見て、戸惑っている方も多いのではないでしょうか。
親が亡くなった直後や施設に入った直後は、相続や片付けのことで頭がいっぱいになりがちです。
そこに「住所変更登記の義務化」という聞き慣れない制度の話が加わると、
何をどこまでやればよいのか分からなくなってしまいます。
この記事では、2026年4月から始まる住所等変更登記の義務化について、
制度の内容と実家の登記簿の確認方法、対応の進め方を整理します。
急いで結論を出す必要はありません。
まずは現状を把握するところから始めていただければと思います。
まず何から確認すればよいか
この方法が向く場合:登記簿の住所・氏名がいつのものか分からない、
実家の名義が誰になっているか把握していない、
相続登記の予定がまだ先という場合は、
まず登記事項証明書を取り寄せて現状を確認することから始めてください。
別の方法を検討したい場合:すでに相続登記や売却の手続きが進んでいる場合は、
司法書士に住所変更登記もあわせて依頼するほうが手続きの重複を避けられます。
住所変更登記の義務化とは|いつから、何が変わるのか
不動産登記法の改正により、2026年4月1日から
「所有権登記名義人の氏名・住所変更登記」の申請が義務化されます。
これは2024年4月1日に先行して始まった相続登記の義務化とは別の制度ですが、
根っこの目的は同じです。
登記簿に記載された所有者の情報を実態に合わせ、
持ち主が分からない不動産を減らそうという趣旨から生まれています。
具体的には、住所や氏名に変更があった日から2年以内に、
法務局へ変更登記を申請することが求められます。
正当な理由なく申請を怠ると、5万円以下の過料の対象になり得るとされています。
ただし過料は自動的に科されるものではなく、
法務局から催告があってもなお正当な理由なく放置した場合に限られる、
という運用が想定されています。
注意したいのは、この義務化が施行日より前の変更にも適用される点です。
何十年も前に転居して住所が変わったまま登記を放置していた、
というケースも対象になります。
施行日から2年間の猶予期間が設けられる見込みですが、
対象になること自体は避けられません。
また、個人の住所変更については、本人の了承を前提に、
住民基本台帳ネットワークの情報を使って登記官が
職権で変更できる仕組みも用意されています。
この仕組みを利用するかどうかは任意で、あらかじめ法務局への申出が必要です。
申出をしていない場合は、これまで通り自分で変更登記を申請する必要があります。
実家の登記簿上の住所を確認する方法
まずは実家が現在どのような登記状態になっているかを確認するところから始めます。
確認できるのは以下の情報です。
- 登記簿上の所有者の氏名・住所(現在どのように記載されているか)
- 所有者が親なのか、祖父母などさらに前の世代のままなのか
- 共有名義になっている場合は、
共有者それぞれの住所・氏名の状態
登記事項証明書(登記簿謄本)は、法務局の窓口、郵送、
またはオンラインの登記情報提供サービスで取得できます。
地番が分からない場合は、固定資産税の納税通知書や
権利証に記載がありますので、あわせて確認しておくと手続きがスムーズです。
実家の登記情報の調べ方については、
実家の間取り図と登記情報の調べ方でも詳しく触れています。
登記簿を確認した結果、名義がすでに祖父母の代のままになっているケースもあります。
この場合は住所変更登記の前に、
相続登記そのものが必要になる可能性が高く、
実家の名義が祖父のままだったとき|相続登記と売却までの進め方を参考にしてください。
住所が古いままだとどうなるか|過料と売却時の支障
住所変更登記を放置していると、次のような場面で支障が出ることがあります。
- 実家を売却しようとしたとき、買主への所有権移転登記の前提として、
住所変更登記を済ませておく必要がある - 相続登記を申請する際、亡くなった名義人の住所と、
住民票の除票・戸籍の附票に記載された住所とのつながりが確認できないと、
追加の証明書類が必要になる - 法務局からの通知や催告が、登記簿上の古い住所に届いてしまい、
気づかないまま時間が経過する
すでに親が亡くなっている場合、住所変更登記そのものは不要で、
相続登記に一本化して進めることになります。
どちらを申請すべきか迷う場合は、まず相続登記が済んでいるかどうかを確認してください。
相続登記の期限や進め方については、
実家の相続登記はいつまでに?義務化後の手続きで整理しています。
住所変更登記の進め方と必要書類
親がまだ存命で、実家の名義人本人が住所変更登記を行う場合の一般的な流れです。
- 登記事項証明書を取得し、
現在の登記上の住所・氏名を確認する - 住民票の写し、または戸籍の附票を用意し、
現住所とのつながりを証明する - 住所の変遷が複数回にわたる場合は、
住民票の除票や戸籍の附票で経路をたどる - 登記申請書を作成し、法務局に申請する(オンライン申請も可能)
- 登録免許税を納付する(不動産1件につき1,000円が目安とされています)
住所の変遷を証明する書類は、市区町村での保存期間が
過ぎていると取得できなくなる場合があります。
実家に残された重要書類の中に、過去の住民票や戸籍謄本が保管されていないか、
確認しておくと手続きが早く進みます。
重要書類の見分け方は実家で見つかる重要書類の見分け方と保管期間にまとめています。
自分で申請するか、司法書士に依頼するか
住所変更登記そのものは、相続登記に比べると必要書類が少なく、
比較的取り組みやすい手続きとされています。
とはいえ、住所の変遷が複数回にわたる場合や、
共有名義で複数人の変更が必要な場合は、書類集めが煩雑になることもあります。
実家の売却や相続登記を近いうちに予定している場合は、
それらの手続きとまとめて司法書士に依頼すると、二度手間を避けられます。
実家の売却全体の流れは実家を売却するまでの流れと必要な手続きで確認できます。
| 方法 | 費用の目安 | 手間 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 自分で申請 | 登録免許税1,000円程度+書類取得の実費 | 書類収集・申請書作成に時間がかかる | 住所変更が1回のみ、単独名義の場合 |
| 司法書士に依頼 | 数万円程度が目安(相続登記等とまとめる場合は加算) | 書類収集も含めて任せられる | 相続登記や売却を同時に進める場合 |
| 住基ネット連携の申出 | 法務局への申出のみ(別途費用の記載は各法務局に要確認) | 今後の住所変更を自動反映できる可能性がある | 今後も本人が住所異動をする見込みがある場合 |
- 費用や税額は法務局・案件ごとに幅があります。
正確な金額は法務局や司法書士に確認してください。 - 過料の対象になるかどうかは個別の事情によります。
正当な理由がある場合は過料の対象外とされる運用が想定されています。 - すでに名義人が亡くなっている場合、
住所変更登記ではなく相続登記の対象になります。
両者を混同しないよう注意してください。 - 住民票の除票・戸籍の附票は保存期間が過ぎると取得できないことがあります。
早めに確認しておくと安心です。
Q. 相続登記と住所変更登記は同じ手続きですか?
別の手続きです。
相続登記は名義人が亡くなった後に所有者を相続人へ変更するもの、
住所変更登記は名義人が存命のまま住所や氏名だけを更新するものです。
すでに名義人が亡くなっている場合は相続登記の対象になります。
Q. すでに亡くなった親の住所が登記簿で古いままの場合はどうすればよいですか?
この場合は住所変更登記を単独で行う必要はなく、
相続登記の手続きの中で最終的な所有者情報が更新されます。
まずは相続登記が済んでいるかどうかを確認してください。
Q. 過料は必ず科されるのですか?
自動的に科されるものではないとされています。
法務局からの催告に対して正当な理由なく放置した場合に
対象となる運用が想定されていますが、
詳細は今後の運用状況を確認する必要があります。
Q. いつまでに何をすればよいですか?
義務化の施行は2026年4月1日で、
施行前の変更にも一定の猶予期間の中で対応が求められます。
まずは登記簿を取得して現状を把握し、
必要な書類が揃うかどうかを確認するところから始めると無理がありません。
まとめ ―
住所変更登記の義務化は、実家の名義人の住所や氏名が
登記簿と実態でずれている場合に、いずれ対応が必要になる制度です。
すでに名義人が亡くなっている場合は相続登記が優先され、
存命の場合は住所変更登記の準備を進めることになります。
まずは登記事項証明書を取り寄せて、
現在の登記状態がどうなっているかを確認することから始めてみてください。
相続や名義の状態によって次に取るべき手続きは変わりますので、
あわせて
法定相続情報一覧図の取り方|実家の相続手続きで戸籍の束を減らす方法
もご確認ください。
― 実家じまい手帖 編集部
