実家の片付けが一段落し、家財の整理にもめどがついてくると、
次に浮かんでくるのが「この家をどうするか」という問いです。
売却まではまだ気持ちが整わない、けれど空き家のまま置いておくのも心配。
そんなとき候補に挙がるのが「貸す」という選択肢です。
ただ、実際に賃貸を検討し始めると、
「どこまで直せば貸せるのか」「費用はどのくらい見ておけばいいのか」が
はっきりしないまま立ち止まってしまう方が少なくありません。
この記事では、実家を貸すときのリフォームの範囲と費用の考え方を、
判断材料として整理していきます。
最小限で貸すか、費用をかけて貸すか
この方法が向く場合: 賃貸経営を長く続ける前提ではなく、
まずは維持費の負担を減らしたい、
様子を見ながら数年貸してみたいという場合は、
最低限の原状回復にとどめる考え方が現実的です。
初期費用を抑えられる分、賃料相場も抑えめになりやすい点は踏まえておきます。
別の方法を検討したい場合: 立地が良く長期的に賃貸需要が見込める、
あるいは将来的に売却する際にも建物の状態を良くしておきたいという場合は、
水回りを中心にリフォームしてから貸す方法も選択肢になります。
ただし費用回収には数年単位の見通しが必要です。
リフォームの範囲を決める前に整理しておきたいこと
リフォームの内容を考える前に、まず確認しておきたいのが
「誰に、いくらで貸したいか」という前提です。
築年数や間取り、最寄り駅からの距離、周辺の賃貸相場によって、
必要な工事の範囲は大きく変わってきます。
たとえば築40年を超える木造住宅を、
単身者向けの賃貸として貸すのか、ファミリー向けとして貸すのかでも
優先すべき工事は変わってきます。
まずは近隣の賃貸物件の家賃相場や設備水準を調べ、
「その相場に見合う状態にする」という目線を持つことが出発点になります。
地域の不動産会社に相談し、現状のまま貸せる家賃の目安と、
リフォームした場合の家賃の目安を両方聞いておくと判断しやすくなります。
また、実家を貸すか売るかで迷っている段階であれば、
実家を売るか貸すかの判断基準も
先に確認しておくと、リフォームにかける費用の考え方も定まりやすくなります。
「最低限」で貸す場合に必要な工事
賃貸に出す以上、まったく手を加えずに貸せることはほとんどありません。
最低限のラインとして検討されることが多いのは、次のような項目です。
- ハウスクリーニング(水回り・床・窓など全体清掃)
- 畳やクッションフロアなど床材の傷んだ部分の補修・張り替え
- クロス(壁紙)の張り替え、または部分補修
- 給湯器やエアコンなど、故障している設備の修理・交換
- 水漏れ・雨漏り・シロアリなど、
構造に関わる不具合の点検と補修
これらは「入居者が安全・快適に暮らせる最低限の状態」を整えるための工事で、
貸す以上は避けにくい部分です。
逆に言えば、デザイン性や設備のグレードにこだわらなければ、
この範囲にとどめて費用を抑えることも可能です。
片付けの過程で畳や床材の傷みが気になった場合は、
実家の畳とカーペットを処分する方法も参考にしながら、
張り替えの範囲を検討してみてください。
賃料や入居率を上げるために検討する工事
最低限の補修にとどめず、もう一段階手を加えることで
賃料や入居率が上がりやすくなるケースもあります。
代表的なのは次のような工事です。
- キッチン・浴室・トイレなど水回り設備の全面交換
- 和室を洋室に変更する(フローリング化)
- 収納の増設や間取りの一部変更
- 断熱性能を上げる窓の交換や断熱材の追加
- 外壁・屋根の塗装や補修(外観の印象を左右する部分)
こうした工事は費用がかさむ一方で、
築古物件でも入居者からの印象が大きく変わり、
空室期間の短縮につながる場合があります。
ただし、必ず賃料アップや早期成約につながるとは限らず、
エリアの需要と工事費用のバランスを見極める必要があります。
不動産会社に「この工事をした場合、家賃はどの程度変わりそうか」を
事前に確認してから判断することをおすすめします。
リフォーム費用の目安
費用は建物の広さ、傷み具合、地域の工事単価によって幅があります。
あくまで目安として、工事範囲ごとのおおよその感覚を整理すると次のようになります。
| リフォームの程度 | 費用目安 | 工期目安 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 最小限の原状回復 | 数十万円〜百万円程度 | 1〜2週間 | まず数年貸して様子を見たい場合 |
| 水回り中心のリフォーム | 百万円台〜二百万円台程度 | 3週間〜1カ月 | 設備の古さが入居の壁になっている場合 |
| フルリフォーム | 数百万円規模 | 1カ月半〜数カ月 | 長期的に賃貸経営を続ける前提がある場合 |
※金額はあくまで目安であり、建物の状態や地域、依頼先によって大きく変わります。
実際の工事費用は、必ず複数の業者から見積もりを取って比較してください。
見積もりの取り方については複数社の見積もりを比較するときに見る場所も参考になります。
費用をかける前に立ち止まって考えたいこと
リフォーム費用は、賃料収入で回収できて初めて意味を持ちます。
数百万円をかけてフルリフォームをしても、
そのエリアの賃貸需要が小さければ、回収までに長い年月がかかることもあります。
また、実家を貸すこと自体が本当に最適な選択かどうかも、
改めて確認しておきたいところです。
将来的に自分や家族が住む可能性がある、
管理の手間をかけたくない、遠方で見回りが難しいといった事情がある場合は、
貸さずに保留する、あるいは売却するという選択肢も十分に検討に値します。
実家を売らずに活用する方法全般については
実家を売らずに活用する選択肢で整理しています。
貸し出す間の管理体制についても、
空き家になった実家で最低限やっておく管理を
事前に確認しておくと、リフォーム後の運用イメージが具体的になります。
- リフォーム前に、家財がすべて搬出されているか確認する
(片付けの手順は実家の片付けはどこから始める?失敗しない手順を参照) - 耐震性や配管の老朽化など、見た目では分かりにくい部分は専門業者に点検してもらう
- 近隣の家賃相場を確認せずに高額なリフォームを先に決めない
- リフォーム費用は必ず複数社から見積もりを取り、
内容の違いを比較する - 賃貸に出さず解体・更地化する選択肢もあわせて検討する
(実家を解体する費用の目安と更地にする判断)
よくある質問
Q. リフォームをせずにそのまま貸すことはできますか。
状態によっては可能です。
ただし賃料は相場より低めになりやすく、
入居者が見つかるまでに時間がかかる場合もあります。
まずは不動産会社に現状を見てもらい、
貸せる可能性と想定家賃を確認するところから始める方法もあります。
Q. リフォーム費用はどのくらいで回収できますか。
建物の規模や工事内容、賃料水準によって大きく異なるため、
一概には言えません。
想定される家賃と工事費用から、大まかな回収年数を
試算したうえで判断することをおすすめします。
Q. 古い家財や仏壇などが残っている場合、
先に片付けが必要ですか。
はい。
リフォーム工事の前提として、
家財の搬出は基本的に必要です。
仏壇や位牌など扱いに迷うものがある場合は、
実家の仏壇を処分する手順と閉眼供養の進め方も参考にしてください。
Q. リフォームせずに貸すか売るか、まだ決められません。
どちらか一方に急いで決める必要はありません。
まずは現状のままでの査定や賃料相場を確認し、費用や手間、
将来の見通しを比較しながら、
ご家族で時間をかけて話し合うことをおすすめします。
まとめ ―
実家を貸す際のリフォームは、最低限の原状回復から、
賃料アップを狙ったフルリフォームまで幅があり、正解はひとつではありません。
大切なのは、賃貸需要と費用回収の見通しを踏まえたうえで、
貸す・保留する・売却するという選択肢を並べて比較することです。
まずは不動産会社に現状を見てもらい、
リフォームなしと工事後の家賃差を確認するところから始めてみてください。
― 実家じまい手帖 編集部
